東京地方裁判所 昭和42年(ワ)9780号・昭42年(ワ)10482号・昭42年(ワ)9343号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕本件土地につき、原告は東京法務局北出張所昭和四二年八月二五日受付第三〇、九六八号による甲区五番の所有権移転登記(原告の本件登記)を、被告宗明玉は当庁昭和四二年八月二五日付仮登記仮処分命令(当庁同年モ第一八、二六四号事件)に基づき、同法務局同出張所同年同月同日受付第三〇、九五七号による甲区四番の所有権移転仮登記を各経由している事実は、当事者間に争いがない。
従つて、不動産登記法第六条の規定上、右各登記がそれぞれ甲区四番および甲区五番である旨の登記簿上の表示に従い、被告宗明玉の本件仮登記が原告の本件登記に対し後先順位を有すべきものものであるところ、かかる登記簿上の表示に従つた効果を否認して、登記簿の表示上優先順位に立つ登記の登記権利者が右優先順位を主張しえないものとするためには、右登記簿上の表示が登記簿上の他の表示との関係上誤謬である旨が一見明白である場合とか、登記簿の表示上優先順位に立つ登記の登記権利者がその登記を経由するに際し、登記者と相謀る等の手段を弄して、登記簿の表示上劣位に立つ登記権利者が本来優先順位に立つべき登記を経由せんとするのを妨げて、自己において優先順位に立つその登記を経由した場合等の特段の事情が認められることが必要であるというべきである。けだし、不動産に対する物権相互の優劣関係を、実体的物権変動の発生時期の前後によらず、登記の前後によることとした民法第一七七条、不動産登記法第六条の法意に照らし、たとえ現実の登記申請の受理の順序と現実になされた登記の順序の間に阻誤が生じた場合にあつても、現実になされた登記簿上の表示に従つて相互の優劣関係を決することが不動産取引の安全を保障することになるからである。そして、ただ前記のような特段の事情がある場合には、登記簿上の各記載相互の関係から誤診であることが一見して明白であるならば考慮さるべき登記簿上の表示に信頼してなさるべき不動産取引の安全がすでに登記簿上不安定化しているのであるから、また、登記官と相謀る等の手段を弄して登記簿の表示上優位に立つ登記を経由した登記権利者は、不動産登記簿第四条の法意に照らし、優先順位を有する旨を主張しうべきものとして保護すべき正当な利益を有しないものであるから、それぞれ優先順位を有する旨を主張しえないものと解すれば足りるものであるからである。
ところで、原告の主張三の要旨は、単に原告の本件登記は被告宗明玉の本件仮登記より前に受理されながら後順位のものとして登記されているのであるから、同被告の本件仮登記は原告に対する関係で無効であるというものであつて、結局、現実の登記申請の受理の順序に反して先順位に登記された本件仮登記の登記権利者たる被告宗明玉は、その優先順位をもつて原告に対し対抗しえないというに帰するところ、前判示のとおり、かかる原告主張の登記手続における瑕疵の存在のみをもつてしては、未だ優先順位を主張しえないと断ずるには十分でないというべきである。そして、本件においては、原告の主張の右登記手続上の瑕疵が登記簿の表示上一見明白であるとか、また本件仮登記手続に際して被告宗明玉が登記官と相謀る等の手段を弄して、原告が本来優先順位に立つ登記を経由すべきであつたものを妨害して自己において優先順位に立つ登記として本件仮登記を経由した等の特段の事情を認めるに足りる証拠はない。とすれば、結局原告の主張三は採用しえないものというべきである。
(岡田辰雄 広田富男 八田秀夫)